1分で分かる廃棄物処理法
廃棄物処理法は、廃棄物の定義を決め、処理業を許可制にし、排出から最終処分までの基準と罰則を定めた法律だ。処理業者にとっては、営業の根拠そのものになる。正式名称は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」。昭和45年12月25日公布の法律第137号で、e-Gov法令検索には略称として「廃棄物処理法」「廃掃法」「ごみ処理法」の3つが登録されている。どれも同じ法律を指す。
この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
つまり、この法律の主語は「環境」と「公衆衛生」であって、処理業の振興ではない。許可も基準も罰則も、その目的を守る手段として置かれている。
所管は環境省。ただし許可を出すのは国ではなく、都道府県知事と政令市長だ。同じ会社でも県境をまたげば別の許可がいる。この構造が、後述する許可制度の理解の出発点になる。
法律本体だけを読んでも実務は動かない。細部は政令と省令に落ちている。
階層 | 名称 | 何が書いてあるか | 関連記事 |
|---|---|---|---|
法律 | 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 | 定義・許可制・基準の大枠・罰則 | 本記事 |
政令 | 廃棄物処理法施行令 | 産業廃棄物20種類の中身、処理基準・委託基準の具体、許可の有効期間 | #3 施行令 |
省令 | 廃棄物処理法施行規則 | 許可申請の様式、委託契約書の記載事項、マニフェストの運用細目 | #2 施行規則 |
告示・通知 | 環境省告示、環境再生・資源循環局通知 | 判断基準の解釈、運用の統一 | 各記事で随時 |
「廃棄物処理法で決まっている」と言われたとき、実際に条文があるのは政令や省令、という場面は多い。委託契約書の記載事項がその典型で、2026年1月の変更は法律ではなく施行規則の改正だった。
「廃棄物」とは何か——有価物との線引きが事業を左右する
廃棄物かどうかは、法律の定義と、行政が積み上げてきた判断の両方で決まる。定義はこうだ。
この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。
つまり、条文上の決め手は「不要物」かどうかであり、放射性物質は最初から別法の領域に外されている。
産業廃棄物はこの廃棄物のうち、事業活動に伴って生じたもので、第2条第4項第1号が燃え殻・汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリ・廃プラスチック類を法律本体で挙げ、残りを施行令に委ねている。施行令の品目を合わせて20種類。紙くず・木くず・繊維くずのように、業種を限定して産業廃棄物になる品目がある点が、排出事業者との会話でいちばん誤解が出る箇所だ。20種類の内訳と業種限定は#7で扱う。
特別管理産業廃棄物は第2条第5項で「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの」とされ、許可も基準も別立てになる(#8)。
処理業者の実務で効くのは、定義の文言より「有価物か廃棄物か」の判断だ。条文は「不要物」としか言っていない。行政は、物の性状・排出の状況・通常の取扱い形態・取引価値の有無・占有者の意思を総合して判断する、という運用を通知で示してきた。いわゆる総合判断説だ。逆有償——運賃が売却代金を上回る取引——が廃棄物と扱われるのは、この判断の帰結になる。
ここで一つ、2026年の改正が効いてくる。これまでは「有価物だから廃棄物処理法の外」という整理が、使用済みの金属・プラスチックの保管や再生には通用していた。改正後はそこに許可制が入る。詳しくは後段で触れるが、第2条の定義をめぐる境界線そのものが動く改正だと押さえておけばよい。
処理業の許可制度——事業の根拠は第14条にある
産業廃棄物処理業の許可は、収集運搬業と処分業に分かれ、どちらも都道府県知事の許可を受けなければ業として行えない。特別管理産業廃棄物は第14条の4で別の許可になる。
産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。以下この条から第十四条の三の三まで、第十五条の四の二、第十五条の四の三第三項及び第十五条の四の四第三項において同じ。)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
つまり、許可の単位は「業を行う区域」であり、運搬だけなら積卸しをする場所で決まる。県境をまたいで運ぶ事業者が複数の許可を持つのは、この一文が理由だ。
処分業は第14条第6項が同じ構造で定める。有効期間は第14条第2項が「五年を下らない期間であつて当該許可に係る事業の実施に関する能力及び実績を勘案して政令で定める期間」とし、現行の政令では新規許可が5年、更新時も原則5年で、更新に際して優良産廃処理業者の基準に適合すると認められた者だけが7年になる(施行令第6条の9・第6条の11)。
許可を得る側の要件より、処理業者が日々意識すべきなのは「失う条件」のほうだ。第14条第5項が欠格要件を列挙し、役員や政令で定める使用人が該当すれば法人の許可に波及する。拘禁刑以上の刑、廃棄物処理法を含む生活環境関係法令違反による罰金刑、許可取消しから5年以内、暴力団関係——この構造は一般廃棄物処理業の第7条第5項と同じ作りで、e-Gov上の現行条文はすでに「拘禁刑」表記に切り替わっている。
許可取消しは減っている。環境省「産業廃棄物行政組織等調査報告書(令和4年度実績)」によれば、許可取消処分は219件で、平成21年度の1,249件から大きく下がった。同じ報告書で産業廃棄物処理業の許可件数は241,906件(前年度比7,181件増)。件数は事業者数ではなく許可の数で、1社が複数県に持てば複数件になる点は読み替えが要る。
結論からいえば、許可は取るものではなく維持するものだ。更新申請の逆算、変更届の期限、役員変更時の欠格要件チェックの3つが漏れると、現場が健全でも許可が止まる。許可申請書の書き方や代行の可否は本記事の範囲外で、手続の詳細は管轄自治体の手引にあたってほしい。
処理基準と保管基準——現場で守るもの
処理基準は「どう運び、どう処分するか」、保管基準は「どう置いておくか」を決める。産業廃棄物処理業者は、第14条第12項により政令で定める産業廃棄物処理基準に従って収集・運搬・処分を行う義務を負う。基準の中身は施行令第6条以下にあり、飛散・流出の防止、悪臭・騒音・振動への配慮、収集運搬車両の表示などが並ぶ。
保管基準は囲い・掲示板・高さ制限・飛散流出防止・ねずみや害虫の発生防止で構成され、積替保管を行う収集運搬業者と、処分業者の場内保管の両方にかかる。掲示板の寸法や勾配の数値は#10で図解する。
処理の全体像を数字で見ると、基準の重さが分かる。環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和5年度実績)」(2026年3月公表)によれば、全国の産業廃棄物排出量は3億6,725万トン。そのうち再生利用量が2億79万トン(54.7%)、減量化量が1億5,772万トン(42.9%)で、最終処分量は875万トン(2.4%)にとどまる。

出典:環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和5年度実績)」2026年3月公表
97%以上が中間処理で姿を変え、最終処分場に行くのは40分の1だ。処理基準は、この中間処理の現場で守られて初めて意味を持つ。なお同じ統計の種類別では汚泥が1億5,454万トン(42.1%)で最大だが、汚泥の再生利用率は7.6%にとどまる。基準を守るだけでなく、どこに処理高度化の余地があるかを読むにも、この統計は使える。
委託契約とマニフェスト——排出事業者との接点
排出事業者責任は、処理業者の営業の前提条件だ。第3条第1項は「事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と定め、産業廃棄物についてはさらに踏み込む。
事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。
つまり、処理業者への委託は「自ら処理する責任」を免除するものではなく、責任を果たす手段の一つとして法が認めた形に過ぎない。
他人に委託するなら、運搬は第14条第12項の産業廃棄物収集運搬業者へ、処分は同項の産業廃棄物処分業者へ(第12条第5項)、しかも政令で定める委託基準に従って、という二段の縛りがかかる。
事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。
つまり、許可業者に頼むだけでは足りず、頼み方そのもの——書面契約と法定記載事項——が基準に縛られている。
第5項は中間処理業者も「事業者」に含めると明記しており、処分業者が残さを最終処分に出すときは自分が排出事業者の立場に立つ。前者に違反すれば5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、後者でも3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金で、いずれも排出事業者側が問われる。処理業者が顧客に説明すべき核心はここにある。「うちに頼めば御社の責任は終わり」は、法律上は成り立たない。
委託基準の中身として、書面による契約と法定記載事項がある。2026年1月1日からは、施行規則第8条の4の2の改正で、委託する産業廃棄物に化学物質排出把握管理促進法の第一種指定化学物質が含まれるかどうかと、含まれる場合の名称・量または割合が記載事項に加わった。施行日前に締結済みの契約は更新時から適用される経過措置がある(令和7年環境省令第15号附則)。含まれない場合でも「含まれない旨」の記載が要る点は、契約書の雛形を見直すときに落ちやすい。雛形と記入例は#11で扱う。
マニフェスト(産業廃棄物管理票)は第12条の3が根拠で、排出事業者が交付し、運搬受託者・処分受託者が終了時に写しを返し、全員が5年間保存する仕組みだ。電子マニフェストはこれを情報処理センター経由で行う(第12条の5)。業界のデジタル化はまだ途上にある。「廃棄物処理・リサイクルに係るDX推進ガイドライン〜処理業者編〜」(2022年3月)によれば、全国の処理業者の電子マニフェスト加入率は27.9%で、紙を併用する理由の94.1%が「排出事業者が電子マニフェストを使っていない」だった。ただしこの調査は全国産業資源循環連合会青年部の会員1,679社への調査(回答321社)で、回答者の4割が売上高10億円以上と大手に偏る。中小の実態はこの数字よりさらに紙寄りとみてよい。
2027年4月1日には電子マニフェストの報告項目が追加される(2025年4月公布の施行規則改正の第2段階。環境省通知 環循規発第2512221号、2025年12月22日)。対象は処分受託者で、最終処分終了報告の際に、最終処分または再生に至るまでの各処分の内容を報告する義務が加わる。加入率27.9%の業界に報告項目が増える以上、排出側への説明負担は処理業者に寄ってくる。
罰則——何をすると、どこまで重いか
罰則は第25条から第34条までにあり、刑の重さで5段階に分かれる。2025年6月1日の刑法改正施行に伴い、条文上の「懲役」は「拘禁刑」に置き換わった。以下は群馬県廃棄物・リサイクル課「廃棄物処理法における罰則一覧表(令和7年6月1日施行後)」の整理に基づく。
条文 | 法定刑 | 主な行為 |
|---|---|---|
第25条第1項 | 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、または併科 | 無許可営業(第14条第1項・第6項違反)、不正手段による許可取得、事業範囲の無許可変更、事業停止命令違反、措置命令違反、無許可業者への委託(第12条第5項違反)、名義貸し、処理施設の無許可設置、無確認輸出、不法投棄(第16条違反)、不法焼却(第16条の2違反) |
第26条 | 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科 | 委託基準違反(第12条第6項違反)、再委託基準違反、施設改善命令・使用停止命令違反、改善命令違反、不法投棄・不法焼却目的の収集運搬 |
第27条の2 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | マニフェストの不交付・虚偽記載・写しの未送付・5年保存義務違反、虚偽管理票の交付、電子マニフェストの虚偽登録・未報告 |
第29条 | 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 欠格要件該当の届出違反、処理困難通知の義務違反 |
第30条 | 30万円以下の罰金 | 帳簿の備付け・記載・保存義務違反、廃止・変更届出違反、報告拒否・虚偽報告、立入検査拒否 |
不法投棄と無確認輸出、不法焼却は未遂も罰する(第25条第2項)。
法人には両罰規定がある。第32条により、従業者が法人の業務に関して違反すれば行為者だけでなく法人にも罰金が科され、無許可営業・不正取得・無確認輸出・不法投棄・不法焼却については法人の上限が3億円に引き上げられる。処理業者にとって現実的な脅威は、刑罰そのものより、役員や従業者の刑が確定した瞬間に欠格要件に該当し、許可が取り消される連鎖のほうだ。
行政処分は刑罰とは別系統で動く。改善命令(第19条の3)、措置命令(第19条の5・第19条の6)、事業停止命令(第14条の3)、許可取消し(第14条の3の2)は、刑事手続を待たずに出る。命令に従わないことが、今度は第25条・第26条の刑罰の対象になる。先の報告書では令和4年度の改善命令は6件、措置命令は12件で、許可取消しの219件に比べれば少ないが、件数の少なさは「出にくい」ことを意味しない。罰則の一覧と運用は#4、摘発事例は#5で扱う。
2026年改正で何が変わるか
2026年6月12日に参議院本会議で改正廃棄物処理法が可決・成立し、6月19日に令和8年法律第43号として公布された。久々の大改正で、柱は3つある。
- スクラップヤード規制。使用済みの金属・プラスチック物品の「保管業」(譲渡目的のもの)と「再生業」に都道府県知事の許可制を導入する。法律の第2条に新しい定義が追加され、第四章の二が新設される。許可の有効期間は5年を下らない政令で定める期間で、保管基準・再生基準・帳簿義務が置かれる。施行は公布日から2年6か月以内で政令で定める日。
- 災害廃棄物対策の強化。地方公共団体と民間事業者の協定制度、災害時に活用できる最終処分場設置者の指定制度などを新設する。施行は公布日から3か月以内。
- 輸出時の国の確認。使用済み金属・プラスチックの輸出に国の確認を求める。
環境省の報道発表(2026年4月10日、閣議決定時)は、全国のスクラップヤードで騒音・水質汚濁・火災などの支障が報告され、都道府県等への調査で4,000件を超える事業場が確認されたことを背景に挙げている。
処理業者への含意は2行で足りる。第一に、「有価物だから廃棄物処理法の外」という整理が、金属・プラスチックの保管と再生については通用しなくなる。第二に、災害協定の相手方として平時から自治体と関わる入口ができる。許可基準の細部はこれから政省令で詰められるため、現時点で「こうすれば通る」と書ける材料はない。政令・省令が出た段階で#6に施行ガイドとしてまとめる。
もう一本、先に触れた施行規則改正(2025年4月22日公布、令和7年環境省令第15号)が2026年1月から段階施行されている。委託契約書の記載事項追加はすでに始まり、電子マニフェストの報告項目追加が2027年4月1日に続く。改正は「法律」と「省令」の2本立てで走っている、と整理しておくと混乱しない。
廃棄物処理法と個別リサイクル法の関係
廃棄物処理法は廃棄物全般の一般法で、品目ごとの個別法が上に乗る。処理業者が関わる主なものを1行ずつ挙げる。
- 建設リサイクル法:一定規模以上の工事でコンクリート・木材等の分別解体と再資源化を義務づける(#12)
- 食品リサイクル法:食品関連事業者に再生利用等を求める。食品廃棄物の処理業者は登録再生利用事業者制度の対象(#17)
- 資源有効利用促進法:製造段階からの3Rを定める。2026年に改正法が施行された(#18)
- プラスチック資源循環法:プラスチック使用製品の設計から排出・回収・再資源化までを扱う(#44)
- PCB特別措置法:PCB廃棄物の処分期限を定める。2026年4月に改正法案が閣議決定された(#29)
個別法は「何をどう再資源化するか」を決め、廃棄物処理法は「誰が・どの許可で・どの基準で扱えるか」を決める。二つは置き換わる関係ではなく、常に重なって適用される。
処理業者が最初に確認する5項目
法律の全体像を読んだあと、自社で最初に確認するのは次の5つで足りる。
- 許可証の品目・区域・有効期限が、現在の事業実態と合っているか
- 役員・政令使用人に欠格要件(第14条第5項)の該当者がいないか
- 2026年1月以降の委託契約書に第一種指定化学物質の記載欄があるか
- マニフェストの返送期限と5年保存が、紙・電子の両方で回っているか
- 自社の扱う金属・プラスチックが、2026年改正のスクラップヤード規制の対象になりうるか
最後の1つは答えが出るのが政省令の公布後になる。それまでは、自社の「有価物」として扱っている物品の一覧を作っておくことが、いちばん確実な準備になる。
条文照合日: 2026年8月21日(e-Gov法令検索・法令API)。罰則の整理は群馬県廃棄物・リサイクル課「廃棄物処理法における罰則一覧表(令和7年6月1日施行後)」(2025年6月25日更新)に基づく。
