廃棄物処理法施行規則(昭和46年厚生省令第35号)は、廃棄物処理法と施行令が枠組みだけを決めた実務の数字を埋める省令だ。マニフェストを何日以内に返すのか、委託契約書に何を書くのか、保管場所の掲示板に何を載せるのか——処理業者の日常業務を直接縛る規定の多くは、法律本体ではなくこの規則にある。

条文の階層は三段になっている。法律が義務の骨格を、政令(施行令)が対象と基準の大枠を、省令(施行規則)が期限・様式・数値を定める。だから「法律を読んだのに実務のやり方が書いていない」のは当然で、探す場所が違う。この記事は、処理業者の目線でどの実務がどの条文にあるのかを地図として整理し、2025年4月22日に公布された改正——すでに施行された2026年1月分と、これから施行される2027年4月分——で何が変わるかまでを扱う。

法律本体の全体像は、ピラー記事廃棄物処理法(廃掃法)とはで整理している。

法・施行令・施行規則はどう役割が違うのか

結論からいえば、処理業者が日常で参照する頻度は「規則>令>法」の順になる。法律は国会が、政令は内閣が、省令は環境大臣が定める。改正のしやすさも同じ順で、実務の細目が省令に置かれているのは、制度の運用を機動的に直せるようにするためだ。

階層

名称

定めるもの

処理業者にとっての中身の例

法律

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)

義務の骨格・罰則

委託基準に従う義務、マニフェスト交付義務、無許可営業の罰則

政令

同法施行令(昭和46年政令第300号)

対象と基準の大枠

産業廃棄物20種類の指定、委託基準の内容、処理基準

省令

同法施行規則(昭和46年厚生省令第35号)

期限・様式・数値

マニフェスト返送期限、委託契約書の記載事項、許可申請の様式

よく「施行令と施行規則は同じようなもの」と言われるが、それは制定主体が違うという前提が抜けている。政令は閣議決定を要し、省令は環境省限りで改正できる。2025年4月の改正が省令だけで完結したのも、変えた中身が契約書の記載事項とマニフェストの報告項目——つまり省令マターだったからだ。

処理業者に効く条文はどこにあるか

実務の場面から逆引きできるように、参照頻度の高い規定の所在をまとめた。条番号は枝番(「第8条の28」のような形)が多く、順番に読んでも見つからない。検索は条番号の漢数字(「第八条の二十八」)で行うのが早い。

実務の場面

主な根拠

内容

排出事業者側の返送期限(確認義務の起点)

規則第8条の28

D票90日・特別管理産業廃棄物60日・E票180日

運搬終了後の写しの送付期限

規則第8条の23

運搬を終了した日から10日

処分終了後の写しの送付期限

規則第8条の25

処分を終了した日から10日

最終処分終了の写しの送付期限

規則第8条の25の3

10日

返送されないときの措置・報告

規則第8条の29

措置を講じ、期限経過から30日以内に様式第4号で知事に報告

管理票の写しの保存

規則第8条の26

5年間

電子マニフェストの登録期限

規則第8条の31の6

3日(日曜・土曜・祝日・1月2日3日・12月29日〜31日を除く)

委託契約書の法定記載事項

令第6条の2第4号ヘ・規則第8条の4の2

委託契約の有効期間、料金、事業の範囲、性状・荷姿等の情報ほか(2026年1月1日から追加あり・後述)

保管場所の掲示板・囲い

規則第8条

囲いの設置、掲示板は縦横それぞれ60cm以上

帳簿の記載事項・保存

規則第10条の8(保存は第2条の5第3項を準用)

種類ごと・区分ごとの記載事項、1年ごとに閉鎖し閉鎖後5年間保存

収集運搬業の許可申請

規則第9条の2

様式第6号による申請書を知事に提出

この表は主要なものに絞っている。自社の許可品目に関わる基準は、e-Gov法令検索の原文で該当条文の前後まで読むこと。枝番の条文は改正で挿入された経緯を持つものが多く、前後の条文とセットで意味が通る構造になっている。

マニフェストの期限は規則が決めている——90日・60日・180日

紙マニフェストの返送期限は、法律ではなく規則第8条の28にある。排出事業者は、交付した管理票の写しが期限までに戻らなければ、処理状況を確認し、必要な措置を講じたうえで報告する義務を負う。

廃棄物処理法施行規則 第8条の28

(管理票の写しの送付を受けるまでの期間)

第八条の二十八 法第十二条の三第八項の環境省令で定める期間は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。

一 法第十二条の三第三項前段又は第四項前段の規定による管理票の写しの送付 管理票の交付の日から九十日(特別管理産業廃棄物に係る管理票にあつては、六十日)

二 法第十二条の三第五項又は第十二条の五第六項の規定による最終処分が終了した旨が記載された管理票の写しの送付 管理票の交付の日から百八十日

つまり、処分終了(D票)は交付から90日、特別管理産業廃棄物は60日、最終処分終了(E票)は180日が、排出事業者側の確認義務が発動するラインになる。

処理業者側から見ると、この期限は「排出事業者から問い合わせが来るデッドライン」だ。期限を過ぎて写しが届かない場合、排出事業者は生活環境保全上の措置を講じ、30日以内に様式第4号の措置内容等報告書を都道府県知事に提出しなければならない(規則第8条の29)。つまり返送の遅れは、顧客に行政への報告義務を発生させる。処分費の値決めや営業トークの前に、返送の実務が顧客との信頼関係そのものだという順序は動かない。

なお、写しを送付するまでの期限は返送期限とは別の規定で、しかも「10日ルール」は1本ではなく3本ある

誰が

いつから10日

根拠

運搬受託者

運搬を終了した日

規則第8条の23

処分受託者

処分を終了した日

規則第8条の25

処分受託者(最終処分終了の写しを受けたとき)

規則第8条の25の3

10日はいずれも処理業者側の送付義務、90日・60日・180日は排出事業者側の確認義務の起点だ。ここを一本の「10日ルール」として覚えていると、収集運搬業と処分業を両方持つ事業者が自社のどの業務にどの期限がかかるのかを取り違える。実際、解説記事の間でも条番号の表記が割れているのは、この3本が混ざっているためだ。

電子マニフェストの場合、この確認は情報処理センター(JWNET)からの通知に置き換わる。登録期限は引渡しから3日以内(土日祝・年末年始を除く。規則第8条の31の6)で、紙とは別の時間管理が要る。

電子と紙は「件数」ではなく「量」で見る

電子マニフェストの普及度は、指標そのものが2025年度に切り替わっている。JWセンターは従来の件数ベースの電子化率に代えて、第五次循環型社会形成推進基本計画(2024年8月閣議決定)に合わせ、産業廃棄物委託処理量に対する捕捉率を採用した。

指標

数値

備考

捕捉率(2024年度)

約64.5%

分母は環境省算出の2021年度産業廃棄物委託処理量 159,727千t(160,000千tで算出)

捕捉率の政府目標

2030年に75%

第五次循環型社会形成推進基本計画

年間登録件数

47,941千件

2025年6月〜2026年5月

(出典: JWセンター「捕捉率・登録件数」/数値は2026年8月時点の掲載値)

この切り替えは実務にも効く。件数で数えると小口の廃棄物が多い事業者ほど電子化が進んで見えるが、量で数えると汚泥やがれき類のような大口の流れが電子化されているかどうかが効いてくる。委託処理量の3割強は、いまも電子マニフェストの外側にある。後述する2027年4月の報告義務は電子マニフェスト経由の分にしか及ばないので、この3割強は制度上の死角として残ることになる。

委託契約書の記載事項は2026年1月1日から増えている

2025年4月22日に公布された改正省令(令和7年環境省令第15号)で、産業廃棄物の委託契約書に法定記載事項が追加された。施行は2026年1月1日で、すでに効力を持っている。改正箇所は規則第8条の4の2第6号で、新たな項目が「ヘ」として挿入され、従前の「ヘ その他当該産業廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項」は「ト」へスライドした。

廃棄物処理法施行規則 第8条の4の2

(委託契約書に含まれるべき事項)

第八条の四の二 令第六条の二第四号ヘ(略)の環境省令で定める事項は、次のとおりとする。

六 委託者の有する委託した産業廃棄物の適正な処理のために必要な次に掲げる事項に関する情報

へ 委託者が特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成十一年法律第八十六号)第二条第五項に規定する第一種指定化学物質等取扱事業者である場合であつて、かつ、委託する産業廃棄物に同条第二項に規定する第一種指定化学物質(同法第五条第一項の規定により第一種指定化学物質等取扱事業者が排出量及び移動量を把握しなければならない第一種指定化学物質に限る。)が含まれ、又は付着している場合には、その旨並びに当該産業廃棄物に含まれ、又は付着している当該物質の名称及び量又は割合

つまり、この項目が要るかどうかは廃棄物の中身だけでは決まらず、委託者が化管法の把握義務を負う事業者かどうかで先に切り分けられる。

条文を分解すると、対象は次の2つがそろった場合に限られる

  1. 委託者が、化管法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)第2条第5項の第一種指定化学物質等取扱事業者であること
  2. 委託する産業廃棄物に、同条第2項の第一種指定化学物質(同法第5条第1項により排出量・移動量の把握義務があるものに限る)が含まれ、又は付着していること

このとき、その旨と、含まれ又は付着している物質の名称および量または割合を契約書に書く。裏を返せば、化管法の把握義務がない事業者からの委託には、この項目は要らない。同じ第6号にはすでに性状・荷姿(イ)、性状変化(ロ)、混合による支障(ハ)、含有マーク(ニ)、石綿・水銀(ホ)が並んでおり、今回の追加はこのWDS的な情報開示の系列に1本足されたという位置づけになる。

影響範囲を数字で見る

項目

数値

出典・年次

PRTR届出事業所数

32,208事業所

令和6年度PRTRデータ(環境省・経済産業省)

届出排出量

約137千t(前年度比 −0.8%)

同上

届出移動量

約271千t(前年度比 +2.0%)

同上

第一種指定化学物質の指定数

515物質

2021年改正政令(2023年4月1日適用)

(出典: 環境省「令和6年度PRTRデータの概要等について」)

全国の産業廃棄物排出事業者の総数から見れば、3万2千という数字は多くない。だが移動量が排出量の約2倍あり、しかも移動量だけが前年度比で増えている点は見逃せない。化管法の移動量には廃棄物としての事業所外への移動が含まれるため、この制度の対象事業者は、廃棄物として外に出す量のほうが大気や水域への排出より大きい構造になっている。処理業者の受入口は、まさにその出口の先にある。

顧客名簿とPRTR届出事業所を突き合わせれば、どの取引先が該当するかは事前に絞り込める。届出データは事業所名・所在地まで公開されており、NITEの「PRTRけんさくん」で検索できる。

委託基準違反という位置づけ

委託基準そのものの根拠は法第12条第6項(政令で定める基準に従う義務)→令第6条の2→規則という三段構えで、今回の改正はこの末端の規則を触ったものだ。

廃棄物処理法 第12条第6項

(事業者の処理)

第十二条

6 事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。

つまり、契約書の記載漏れは単なる書式不備ではなく、委託基準違反として排出事業者側の法違反を構成する。

経過措置がある。同省令附則第2条により、施行時点で締結済みの契約書は、契約の更新までは記載事項を追加しなくてよい。2026年1月1日に一斉に契約書を作り直す必要はなかったが、裏を返せばいまこの瞬間も、旧様式のまま有効に生きている契約が大量に残っているということだ。自動更新条項で回っている契約は更新の認識がずれやすく、どの契約がいつ更新を迎えるかの棚卸しが先になる。

2027年4月施行の電子マニフェスト項目追加に処分業者はどう備えるか

同じ改正省令のもう一つの柱が、電子マニフェストの報告項目追加だ。施行は2027年4月1日。処分業者は、電子マニフェストによる処分終了・最終処分終了の報告にあわせて、最終処分または再生に至るまでのすべての処分について、処分を行った者の氏名または名称・許可番号、処分を行った事業場の名称・所在地、処分方法、処分量といった事項の報告が義務付けられる。

これは排出事業者向けの改正に見えて、報告義務の主体は処分業者だ。ここが委託契約書の改正(義務主体は排出事業者)との決定的な違いになる。中間処理後の廃棄物がどう処分され、何がどれだけ再生されたのか——これまで排出事業者から見えなかった処理フローの下流を、処分業者の側が数字で開示する制度に変わる。

JWNETは対応する入力項目を先行して追加しており、2025年5月から2027年3月31日までは任意項目として入力できる。排出事業者側は追加項目を「再資源化等の情報」として照会できるようになる。

準備は入力作業の話に留まらない。処分方法ごとの処分量を報告するには、場内の処理実績を処分方法単位で集計できる記録体制が前提になる。日々の受入・処理記録が品目単位でしか取れていない場合、集計の粒度を変える作業が2027年3月までの宿題になる。任意項目期間はこの体制の試運転に使える。

そして先ほどの捕捉率が効いてくる。2024年度の捕捉率が約64.5%ということは、紙で回っている3割強の委託処理量については、この報告義務がそもそも発生しない。処分業者から見れば、同じ受入品目でも電子マニフェスト経由か紙かで報告の粒度が変わるということだ。場内の集計体制を二本立てで作るか、紙分も含めて粒度を揃えて一本化するかは、2027年3月までに決めておく設計判断になる。

現場での判断基準

規則の改正は、公布から施行まで時間差があり、施行日も規定ごとに違う。2025年公布の改正は2026年1月(契約書・施行済み)と2027年4月(電マニ・施行前)の二段施行で、対応すべき部署も総務・契約側と現場・システム側で分かれる。

改正対応を「施行日ギリギリの書類仕事」にするか「顧客への説明材料」にするかで、同じコストの意味が変わる。委託契約書の改正はすでに施行されているのに、排出事業者の多くはまだ把握していない。契約更新の案内に改正の説明を一枚添えるだけで、法改正が営業接点になる。


条文照合日: 2026年8月26日(e-Gov法令検索/法令・規則とも令和8年7月1日施行版)

この記事の出典
  1. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号)/e-Gov法令検索(令和8年7月1日施行版・2026年8月26日照合)
  2. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)/e-Gov法令検索(令和8年7月1日施行版・2026年8月26日照合)
  3. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和7年環境省令第15号・2025年4月22日公布)
  4. 公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)「捕捉率・登録件数
  5. 環境省「令和6年度PRTRデータの概要等について——第一種指定化学物質の排出量・移動量の集計結果等——
  6. 環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)