産業廃棄物の保管基準は、誰が保管するかで根拠になる条文が分かれる。排出事業者が運搬されるまでの間に保管する場合は廃棄物処理法第12条第2項と施行規則第8条、収集運搬業者や処分業者が積替えや処分のために保管する場合は施行令第6条が根拠になる。前者には保管の日数や量の上限が書かれていないが、後者には「1日平均搬出量の7倍」「1日処理能力の14倍」という数量の上限が政令で定められている。この記事では、令和8年9月16日施行版の法・施行令・施行規則に当たり、この2系統と、特別管理産業廃棄物の上乗せ、事業場外保管の届出、基準に合わないときの命令までを1枚の地図にまとめる。
保管基準は「誰の保管か」で根拠が2系統に分かれる
排出事業者の保管義務は、法律の次の一文から始まる。
事業者は、その産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準(以下「産業廃棄物保管基準」という。)に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければならない。
委任先は「環境省令」であり、中身は施行規則第8条に置かれている[1][3]。一方、収集運搬業者と処分業者は、法第14条第12項によって産業廃棄物処理基準に従う義務を負う[1]。この処理基準が施行令第6条で、積替えのための保管は同条第1項第1号ホ、処分や再生のための保管は同項第2号ロに定めがある[2]。どちらも一般廃棄物の保管ルール(施行令第3条第1号チ・リ)の「例による」と書いたうえで、数量の上限を足す作りになっている[2]。なお施行令第6条は、排出事業者が自ら運搬や処分をする場合(法第12条第1項)にも適用される[1][2]。
誰の保管か | 根拠条文 | 量の上限 |
|---|---|---|
排出事業者(運搬されるまでの間) | 法第12条第2項 → 施行規則第8条 | 定めなし |
収集運搬業者(積替えのための保管) | 法第14条第12項 → 施行令第6条第1項第1号ホ | 1日平均搬出量×7 |
処分業者(処分・再生のための保管) | 法第14条第12項 → 施行令第6条第1項第2号ロ | 1日処理能力×14(例外あり) |
熱回収施設の認定を受けた施設 | 施行令第7条の3第1号ロ(2) | 1日処理能力×21 |
特別管理産業廃棄物(排出事業者) | 法第12条の2第2項 → 施行規則第8条の13 | 定めなし |
法・施行令・施行規則の全体の関係は、廃棄物処理法とはと廃棄物処理法施行規則のポイントで整理している。
判断フロー
自社は排出事業者として保管しているか——そうなら施行規則第8条を見る
収集運搬業の許可で積替えのために保管しているか——そうなら施行令第6条第1項第1号ホ(×7)を見る
処分業の許可で処分・再生のために保管しているか——そうなら施行令第6条第1項第2号ロ(×14と例外)を見る
保管する物に特別管理産業廃棄物が含まれるか——含まれるなら特管の基準を上乗せする
排出事業者が建設工事の産業廃棄物を事業場の外の300平方メートル以上の場所で保管するか——そうなら事前の届出が要る
排出事業者の保管基準——施行規則第8条の5つの要件
施行規則第8条が定める要件は、場所・飛散等の防止・害虫・石綿・水銀の5つに分かれている[3]。
- 囲い: 保管の場所の周囲に囲いを設ける。囲いに廃棄物の荷重が直接かかる構造なら、その荷重に対して構造耐力上安全であることが要る(第1号イ)
- 掲示板: 見やすい箇所に、次の要件を満たす掲示板を設ける(第1号ロ)
- 飛散・流出・地下浸透・悪臭の防止: 汚水が生じるおそれがあれば排水溝等を設け、底面を不浸透性の材料で覆う。屋外で容器を用いずに保管するなら、積み上げの高さに制限がかかる(第2号)
- 害虫の防止: ねずみが生息し、蚊・はえ等が発生しないようにする(第3号)
- 石綿含有産業廃棄物・水銀使用製品産業廃棄物: 他の物と混ざらないよう仕切りを設ける等の措置。石綿含有産業廃棄物は、覆いや梱包による飛散防止も要る(第4号・第5号)
掲示板の大きさは数字で決まっている。
縦及び横それぞれ六十センチメートル以上であること。
表示する事項は次の4つで、石綿含有産業廃棄物・水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等が含まれる場合はその旨も種類の欄に書く[3]。
表示事項 | 根拠 |
|---|---|
産業廃棄物の保管の場所である旨 | 施行規則第8条第1号ロ(2)(イ) |
保管する産業廃棄物の種類 | 同(ロ) |
保管の場所の管理者の氏名又は名称及び連絡先 | 同(ハ) |
屋外で容器を用いずに保管する場合は、積み上げの高さのうち最高のもの | 同(ニ) |
高さの制限は、屋外で容器を用いずに保管する場合にだけかかる。囲いに荷重がかからない構造なら、囲いの下端から保管場所の内側へ向けて上方に50パーセントの勾配の面を引き、その面を超えない高さまでとなる。囲いに荷重がかかる構造の部分は、囲いの上端から50センチメートル下の線(基準線)を起点に、内側2メートル以内とそれより奥で別の計算をする[3]。容器に入れて保管する場合や屋内の保管には、この高さの規定はかからない。
保管の「期間」と「量」に法定の上限はあるか
排出事業者の保管には、日数の上限も量の上限も条文に書かれていない。施行規則第8条の5つの要件の中に、期間や数量の項目は無い[3]。
収集運搬業者と処分業者は違う。積替えのための保管には、政令が量の上限を置いている。
産業廃棄物の保管を行う場合には、第三条第一号チ及びリの規定の例によるほか、当該保管する産業廃棄物の数量が、環境省令で定める場合を除き、当該保管の場所における一日当たりの平均的な搬出量に七を乗じて得られる数量を超えないようにすること。
処分や再生のための保管は、量に加えて期間の定めもある[2]。量は処理施設の1日当たりの処理能力の14倍まで(第2号ロ(3))。期間は「環境省令で定める期間」を超えてはならないとされ(第2号ロ(2))、その期間は施行規則で次のように決まっている。
令第六条第一項第二号ロ(2)の環境省令で定める期間は、当該産業廃棄物の処理施設において、適正な処分又は再生を行うためにやむを得ないと認められる期間とする。
つまり処分業者の保管期間も、日数では書かれていない。数字で縛っているのは量のほうである。
保管の主体 | 期間 | 量 |
|---|---|---|
排出事業者 | 定めなし | 定めなし |
積替え(収集運搬業者) | 定めなし | 1日平均搬出量×7 |
処分・再生(処分業者) | やむを得ないと認められる期間 | 1日処理能力×14(例外あり) |
熱回収認定施設 | 処分・再生と同じ | 1日処理能力×21 |
よくある誤解
処理業者の保管——積替えと処分のための保管
収集運搬業者と処分業者の保管場所にも、囲い・掲示板・飛散等の防止・害虫の防止が求められる。施行令第6条が施行令第3条第1号リの「例による」としているためで、掲示板は縦横60センチメートル以上、種類・管理者の氏名又は名称と連絡先・屋外で容器なしの場合の最高の高さを表示する(施行規則第1条の5の例)[2][3]。排出事業者の掲示板と違うのは、保管できる数量の上限も表示する点である。積替えは「積替えのための保管上限」(施行規則第7条の3)、処分は「処分等のための保管上限」(施行規則第7条の5)を書く[3]。
この保管上限は掲示板だけでなく、収集運搬業の許可申請書(施行規則第9条の2第1項第5号)や、排出事業者と結ぶ運搬の委託契約書(施行規則第8条の4の2第4号)にも記載する事項になっている[3]。排出事業者の側から見れば、委託先の積替保管場所の上限は契約書で確認できる。
積替えの×7には適用除外が2つある。船舶で運ぶ場合で積載量が保管上限を上回るときと、使用済自動車等を保管するときである(施行規則第7条の4)[3]。処分の×14には、施行規則第7条の8が例外の数量を定めている[3]。
場合 | 上限 |
|---|---|
優良産業廃棄物処分業者が廃プラスチック類を保管 | 1日処理能力×28 |
建設工事で生じた分別済みの木くず・コンクリートの破片を再生のために保管 | ×28 |
同じくアスファルト・コンクリートの破片 | ×70 |
豪雪地帯の廃タイヤ処理施設で11月〜翌年3月に保管 | ×60 |
定期点検・修理(7日を超えるもの)の期間中 | 処理能力×経過日数+基本数量の2分の1 |
船舶で運び、積載量が基本数量を超えるとき | 積載量+基本数量の2分の1 |
新型インフルエンザ等で施設が止まったとき(汚泥・安定型産業廃棄物・鉱さい・ばいじん。自ら処分する事業者又は優良産業廃棄物処分業者に限る) | ×35 |
使用済自動車等を保管する場合は、量ではなく高さで上限が決まる。囲いの下端から内側3メートル以内は3メートル、それより奥は4.5メートルまでである(施行規則第1条の6第3号)[3]。
特別管理産業廃棄物で上乗せされること
排出事業者が特別管理産業廃棄物を保管する場合は、法第12条の2第2項と施行規則第8条の13が根拠になる[1][3]。囲い・掲示板(縦横60センチメートル以上)・飛散等の防止・害虫の防止は普通の産業廃棄物と同じで、そのうえに次の措置が加わる[3]。
- 他の物が混入しないよう仕切りを設ける等の措置(第4号)
- 種類に応じた措置(第5号): 廃油・PCB汚染物等は容器に入れ密封するなど揮発の防止と高温にさらさない措置、廃酸・廃アルカリは容器に入れ密封するなど腐食の防止、廃石綿等は梱包するなど飛散の防止、腐敗するおそれのあるものは容器に入れ密封するなど腐敗の防止など
収集運搬業者は、特別管理産業廃棄物を積替え以外で保管してはならない(施行令第6条の5第1項第1号ハ。PCB関係は例外)。積替えのために保管する場合の上限は、普通の産業廃棄物と同じ1日平均搬出量×7である(同号ニ)[2]。
普通の産業廃棄物と何が違うかの全体像は、特別管理産業廃棄物とはで6点に分けて整理している。
事業場の外で保管するときの届出
排出事業者が、産業廃棄物を生じた事業場の外で自ら保管する場合は、事前に都道府県知事へ届け出る義務がある(法第12条第3項)[1]。ただし対象は絞られている。
法第十二条第三項前段の環境省令で定める保管は、当該保管の用に供される場所の面積が三百平方メートル以上である場所において行われる保管であつて、次の各号のいずれにも該当しないものとする。
対象となる産業廃棄物は建設工事に伴い生ずるものに限られ(施行規則第8条の2)、収集運搬業・処分業の許可に係る施設での保管や、産業廃棄物処理施設での保管は除かれる(施行規則第8条の2の2第1号・第2号)[3]。つまり、この届出は排出事業者が自分で確保した場所に建設系の産業廃棄物を置く場合の手続であり、許可を受けた積替保管施設の運営には関係しない。
手続 | 期限・様式 | 根拠 |
|---|---|---|
事前の届出 | あらかじめ・様式第二号の四 | 法第12条第3項、施行規則第8条の2の4 |
変更の届出 | あらかじめ・様式第二号の五 | 法第12条第3項後段、施行規則第8条の2の5 |
廃止の届出 | やめた日から30日以内・様式第二号の六 | 施行規則第8条の2の6 |
非常災害の応急措置として保管した場合 | 保管した日から14日以内(事後) | 法第12条第4項、施行規則第8条の2の7 |
事前の届出をしない、又は虚偽の届出をした場合は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象になる(法第29条第1号)[1]。特別管理産業廃棄物にも同じ仕組みがある(法第12条の2第3項、施行規則第8条の13の2)[1][3]。
基準を守らなかったらどうなるか
保管基準に合わない保管は、まず都道府県知事による改善命令の対象になる。
産業廃棄物処理基準又は産業廃棄物保管基準(特別管理産業廃棄物にあつては、特別管理産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物保管基準)が適用される者により、当該基準に適合しない産業廃棄物の保管、収集、運搬又は処分が行われた場合(次号に掲げる場合を除く。)
基準に合わない保管によって生活環境の保全上の支障が生じ、又は生ずるおそれがあるときは、支障の除去等の措置命令(法第19条の5)の対象になる[1]。保管基準に違反したこと自体に直接の罰則は無く、罰則がかかるのはこれらの命令に違反したときである。改善命令違反は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はその併科(法第26条第2号)、措置命令違反は5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又はその併科(法第25条第1項第5号)[1]。
罰則の全体と、許可の取消しにつながる欠格要件の連鎖は、廃棄物処理法違反の罰則一覧にまとめている。
2026年改正の「ヤード」の保管は別の制度
令和8年の廃棄物処理法改正で、使用済の金属・プラスチック製品を保管する「ヤード」を許可制にする規定が設けられた。この記事で扱った保管基準とは別の制度で、ヤードの保管基準は施行日も中身も政省令待ちの段階にある。改正の内容と現時点で決まっていることは、2026年廃棄物処理法改正で整理している。
次に確認すべきこと
保管基準で迷ったら、まず自社が「排出事業者として保管している」のか「収集運搬業・処分業の許可で保管している」のかを決める。前者なら施行規則第8条の5要件と掲示板の4項目、後者なら施行令第6条の数量上限と、掲示板・許可申請書・委託契約書に書いた保管上限が一致しているかを確認する。特別管理産業廃棄物が含まれるなら上乗せの措置を、建設系の廃棄物を事業場の外に置くなら届出の要否を確かめる。条文の文言は改正で変わることがあるため、最終的な確認は e-Gov 法令検索の現行版で行い、運用の細目は管轄の都道府県・政令市の産業廃棄物担当に確認する。
