「これは産廃ですか、一般廃棄物ですか」——処理業者が受入窓口で最も多く受ける質問だろう。答えは廃棄物処理法の第2条にあるが、多くの解説がこの条文の読む順序を取り違えている。
法は「一般廃棄物とは家庭やオフィスから出るごみ」と定めてはいない。産業廃棄物を先に定義し、そこから漏れたものを一般廃棄物と呼ぶ。引き算である。この順序を押さえると、同じ紙くずが業種によって分かれる理由も、産業廃棄物処理業の許可では一般廃棄物を1kgも扱えない理由も、一本の線でつながる。
この記事は、排出する側ではなく受け取る側の目線で境界を整理する。分類を知るためではなく、目の前の廃棄物を自社が合法に受け入れられるかを判断するために読んでほしい。法律全体の構造は、廃棄物処理法(廃掃法)の全体像で整理している。
法は「一般廃棄物」を定義していない
条文はこうなっている。
この法律において「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。
これで全文である。性状も排出元も書かれていない。産業廃棄物でないものが一般廃棄物、という以上の内容を持たない条文だ。
では産業廃棄物はどう定義されているか。
事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
条件が二つ重なっている。事業活動に伴って生じたことと、掲げられた種類に当たることである。片方だけでは産業廃棄物にならない。工場から出ても種類に当たらなければ産業廃棄物ではなく、種類に当たっても家庭から出れば産業廃棄物ではない。
同項第2号は輸入された廃棄物を産業廃棄物に含めているが、国内の排出には関係しない。
判断の順序は次のようになる。
手順 | 問い | 該当しない場合 |
|---|---|---|
1 | そもそも廃棄物か(法第2条第1項) | 廃棄物処理法の対象外 |
2 | 事業活動に伴って生じたか | 一般廃棄物(家庭系) |
3 | 政令で定める種類に当たるか | 一般廃棄物(事業系) |
4 | 上記すべてに当たる | 産業廃棄物 |
引き算であることの実務的な意味は、迷ったときの落ち先が一般廃棄物だという点にある。 産業廃棄物に当たるかどうかがはっきりしない廃棄物は、産業廃棄物として扱ってよいことにはならない。判断がつかないまま産廃として受け入れると、受入側が無許可営業を問われる側に立つ。
同じ紙くずが、出した会社の業種で別の廃棄物になる
政令が定める産業廃棄物の種類(令第2条)には、出した事業者の業種によって産業廃棄物になったりならなかったりする品目がある。紙くず、木くず、繊維くずなどがこれにあたる。
建設業や出版業から出る紙くずは産業廃棄物だが、同じ紙くずでも一般的な事務所のコピー用紙は産業廃棄物ではない。物としては同一で、書類の中身も関係ない。排出した事業者がどの業種に属するかだけで分かれる。
20種類の内訳と、業種限定がかかる品目の一覧は産業廃棄物の種類一覧で整理している。
受入側の実務として重要なのは、廃棄物の見た目からは判断できないという一点だ。同じトラックに載った同じ見た目の紙くずが、排出事業者によって別の廃棄物になる。契約と伝票で排出事業者の業種を確認する以外に、正しく判断する方法がない。
分別が現場任せになっている排出事業者では、事務所の紙くずと工場の紙くずが同じ集積場に置かれていることがある。この状態で「紙くず」として一括で受け入れると、産業廃棄物処分業の許可の範囲外である事業系一般廃棄物が混ざる。
「事業系一般廃棄物」は、産廃でも家庭ごみでもない第三の箱
一般廃棄物は、実務上さらに二つに分かれる。家庭から出る家庭系一般廃棄物と、事業活動から出るが産業廃棄物に当たらない事業系一般廃棄物である。法律にこの区分の定義規定はなく、条文の組み合わせから導かれる呼び方だ。
飲食店の厨房から出る生ごみ、小売店の野菜くず、一般的なオフィスの紙くず——いずれも事業活動に伴って生じているが、政令の種類に当たらないため一般廃棄物になる。
混乱がほぼすべてここで起きる。 「事業から出たものは産廃」という誤解が根強く、排出事業者側が事業系一般廃棄物を産廃として委託しようとする場面は珍しくない。
ここで押さえておきたいのが、事業者の責任は区分をまたいで及ぶという点である。
事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
条文が言っているのは「産業廃棄物」ではなく「廃棄物」だ。事業系一般廃棄物も、排出事業者が自らの責任で適正に処理する対象に含まれる。 家庭ごみのように市町村の収集に出せば終わり、とはならない。
同じ弁当を売る店舗から出る廃棄物でも、残飯は事業系一般廃棄物、プラスチック製の容器は産業廃棄物になりうる。一つの排出事業者が両方を出すのが通常の姿であり、処理の委託先も搬入先も分かれる。
責任の持ち主が違う——市町村が持つか、排出事業者が持つか
区分が分かれると、処理の責任を負う主体が変わる。
一般廃棄物については、市町村が処理計画を定め、区域内の一般廃棄物を収集・運搬・処分しなければならない(法第6条の2第1項)。産業廃棄物については、条文はこうだ。
事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。
一般廃棄物 | 産業廃棄物 | |
|---|---|---|
処理の主体 | 市町村(法第6条の2第1項) | 排出事業者(法第11条第1項) |
許可権者 | 市町村長(法第7条) | 都道府県知事等 |
委託先の制限 | 一般廃棄物収集運搬業者等(法第6条の2第6項) | 産業廃棄物処理業者等 |
再委託 | 一律禁止(法第7条第14項) | 政令の基準を満たす場合に限り可 |
再委託の扱いが決定的に違う。 一般廃棄物収集運搬業者と一般廃棄物処分業者は、他人への委託が条文で一律に禁じられている。産業廃棄物には政令が定める要件を満たせば再委託できる例外があるが(廃棄物処理法施行令の要点)、一般廃棄物にその例外はない。産廃の感覚で一廃の再委託を組むと、そこで違反が確定する。
委託先の制限(「一般廃棄物収集運搬業者等」「産業廃棄物処理業者等」)の具体的な範囲は施行規則側が定めており、廃棄物処理法施行規則のポイントで条文の地図を整理している。
なお、市町村が産業廃棄物を扱う経路が一つだけある。
市町村は、単独に又は共同して、一般廃棄物とあわせて処理することができる産業廃棄物その他市町村が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行なうことができる。
いわゆる「あわせ産廃」である。方向を取り違えないこと。 これは市町村が産業廃棄物を引き受けられるという規定であって、産業廃棄物処理業者が一般廃棄物を扱えるようになる規定ではない。しかも「できる」であり、市町村に義務はない。受け入れの可否も対象品目も市町村ごとに異なる。
また、事業活動に伴い多量の一般廃棄物を出す事業者に対しては、市町村長が減量計画の作成や運搬先を指示できる(法第6条の2第5項)。大口の排出事業者を顧客に持つ場合、市町村の指示が搬入先を左右しうる。
産廃の許可では一廃を1kgも扱えない
ここからが受け取る側の本題になる。
一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。
処分業も同じく市町村長の許可である(法第7条第6項)。産業廃棄物処理業の許可は都道府県知事等が出すもので、一般廃棄物には一切効力を持たない。 別の法律関係だと考えたほうが実態に近い。
産業廃棄物収集運搬業の許可だけを持つ事業者が、事業系一般廃棄物を1kg積んだ時点で、その分については無許可で一般廃棄物の収集運搬を行ったことになる。量の多寡は要件になっていない。
そして、その許可を取ることが構造的に難しい。許可基準の第1号がこれだ。
当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること。
処分業についても同じ文言が置かれている(法第7条第10項第1号)。第2号は申請内容が一般廃棄物処理計画に適合することを求める。
つまり「市町村が自分でできるなら、民間に許可を出してはならない」という構造になっている。 新規の一般廃棄物処理業許可がほとんど出ないのは業界の慣行ではなく、法定の許可要件そのものだ。市町村が収集体制を持っている限り、第1号を満たしようがない。
この条文に触れている一般向けの解説はほとんどない。しかし受入判断でも営業でも、ここが効いてくる。「一廃も一緒に運びますよ」と言えないのは、やる気や体制の問題ではなく許可制度の設計だからだ。
産廃業者が一般廃棄物に触れる4つの道
とはいえ、経路がまったくないわけではない。条文上、次の4つがある。
① 一般廃棄物処理業の許可を取る(法第7条第1項・第6項)正面から取る道。ただし前節のとおり第5項第1号の壁がある。既存業者の廃業や市町村の体制縮小といった事情が動かないかぎり、新規に門が開くことは少ない。
② 専ら再生利用の目的となる一般廃棄物(法第7条第1項ただし書)
ただし、事業者(自らその一般廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
いわゆる「専ら物」である。許可そのものが不要という強い例外で、処分業(法第7条第6項ただし書)にも同じ規定が置かれている。ただし「専ら再生利用の目的となる」ものに限られ、対象は限定的に運用されている。 自社の取扱品目が該当するかは、事前に市町村へ確認しておく必要がある。品目の範囲や委託基準の扱いは専ら物の許可不要はどこまでかで整理している。
③ 再生利用に係る特例認定(法第9条の8)
第一項の認定を受けた者は、第七条第一項若しくは第六項又は第八条第一項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、当該認定に係る一般廃棄物の当該認定に係る収集若しくは運搬若しくは処分を業として行い、又は当該認定に係る一般廃棄物処理施設を設置することができる。
環境大臣の認定を受ければ、市町村長の許可なしに認定の範囲で一般廃棄物を扱える。再生利用を軸にする事業者にとって、①の壁を越える現実的な出口はここにある。 対象となる一般廃棄物の種類、再生利用の内容、事業者と施設の基準はいずれも環境省令が定める。
④ 広域的処理・無害化処理の特例認定(法第9条の9・第9条の10)③と同じ構造の認定制度が2本ある。広域的処理は製品を回収する仕組みを想定した制度で、委託を受けて処理を行う者も許可なしで扱える(法第9条の9第4項)。無害化処理は石綿を含む一般廃棄物などの高度な処理を対象とする(法第9条の10)。
経路 | 許可・認定 | 権限者 |
|---|---|---|
① 一般廃棄物処理業 | 許可 | 市町村長 |
② 専ら物 | 不要 | — |
③ 再生利用の特例 | 認定 | 環境大臣 |
④ 広域的処理・無害化処理の特例 | 認定 | 環境大臣 |
②〜④はいずれも認定や例外の範囲内でしか動けない。認定を受けた種類・内容から外れた一般廃棄物を扱えば、①の許可がない以上は無許可営業になる。範囲の管理そのものが実務になる。
「特管」は産業廃棄物だけの話ではない
特別管理という区分は、産業廃棄物と一般廃棄物の両方に置かれている。
この法律において「特別管理一般廃棄物」とは、一般廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるものをいう。
第5項の特別管理産業廃棄物も、対象が産業廃棄物になるだけで文言の構造は同じだ。危険性の指標は共通で、母集団だけが違う。
したがって区分は4つある。一般廃棄物・特別管理一般廃棄物・産業廃棄物・特別管理産業廃棄物。特別管理産業廃棄物の許可は通常の産業廃棄物の許可とは別で、特別管理一般廃棄物はさらにその外側にある。
具体的にどの廃棄物が指定されているかは政令が定めるが、本記事では条番号を確認できていないため示さない。指定の内訳は特別管理産業廃棄物を扱う記事で整理する。
現場での判断基準
境界の判断は、物を見て決めるものではない。排出事業者が誰で、どの業種で、自社の許可がどこまで及ぶかという三つの情報の組み合わせで決まる。
排出事業者の多くは、自社が事業系一般廃棄物と産業廃棄物の両方を出していることを認識していない。この線引きを説明できること自体が、処理業者の営業材料になる。 分類の誤りは排出事業者側の法違反にもつながるため、受入時の確認は顧客のリスクを下げる行為でもある。
