混合廃棄物の選別精度を事業者間で比較できる全国統計は存在しない。公的な場で定量化されているのは、「選別すればどこまで安定型産業廃棄物として扱えるか」という基準値だけであり、その数字は熱しゃく減量5%以下である。

「選別精度の統計」を探しても出てこない理由

環境省が毎年公表している産業廃棄物の統計は、排出量・処理量・再生利用量といった総量の把握を目的に設計されており、選別工程そのものの歩留まりや誤選別率を追跡する調査ではないため、この前提を外したまま「業界の選別精度」を数字で語ろうとすると、存在しない指標を探し回ることになる。参考値として、環境省『平成31年度建設廃棄物の再資源化に関する調査・検討業務報告書』(令和2年3月)では、全国における建設混合廃棄物の場外搬出量は平成30年度で2,284千tと推計されている[6]。ただし、これも選別前の搬出量を示す数字であり、選別後にどれだけ安定型産業廃棄物として扱えたかを示すものではない。

公表されている数字として先に見ておくべきなのは、選別精度そのものではなく、産業廃棄物処理の全体量がどの程度の規模で動いているかという点である。環境省『産業廃棄物排出・処理状況調査』(令和5年度実績)によれば、令和5年度の産業廃棄物の総排出量は367,249.6千tであり、このうち中間処理量は287,295.9千tにのぼる[1]。さらに、選別・破砕・圧縮といった中間処理工程を経た廃棄物の再生利用量計は200,788.3千t、最終処分量計は8,746.1千t、焼却等による減量化量は157,715.2千tだった[1]。

指標

数値

出典・年次

産業廃棄物 総排出量

367,249.6千t

環境省『産業廃棄物排出・処理状況調査』(令和5年度実績)

中間処理量

287,295.9千t

同上

再生利用量 計

200,788.3千t

同上

最終処分量 計

8,746.1千t

同上

減量化量

157,715.2千t

同上

ここで誤解しないでほしいのは、この表が示すのは処理量の全体像であって、選別の精度や品質を示す指標ではないという点であり、中間処理量287,295.9千tのうち、どれだけが手選別を経て、どれだけが機械選別のみで処理されたかという内訳は、この統計からは読み取れない。選別精度を比較したい現場担当者にとっては、総量の数字が豊富に見えても、実際に知りたい工程別の品質情報には届かないため、統計の読み方そのものを切り替える必要がある。

公的に定量化された唯一の基準――熱しゃく減量5%

選別の出来を数字で測れる公的な基準は、実は1つしかない。環境省の通知「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について」(環廃産第110329004号、平成23年3月30日付)が示す、熱しゃく減量5%以下という数値である[2]。

この通知は、安定型産業廃棄物とそれ以外の廃棄物が混在する建設混合廃棄物について、選別によって安定型産業廃棄物として扱えるようになる条件を定めている。具体的には、建設混合廃棄物から安定型産業廃棄物を選別(手、ふるい、風力、磁力、電気等を用いる方法により)し、熱しゃく減量を5%以下とした場合、当該廃棄物は安定型産業廃棄物として取り扱うことができる、という構成だ[2]。熱しゃく減量とは、対象物を強熱したときの重量減少率を表す値である[2]。

ここで押さえるべきなのは、二次資料や業界の説明では「安定型とそれ以外を分ければよい」という理解で止まりがちである一方、通知を当たると選別の出来栄えそのものを数値で証明する仕組みになっているという点である。しかも通知は念を押すように、安定型産業廃棄物以外の廃棄物が5%まで含まれていてもよいということではないと明記している[2]。熱しゃく減量5%という数字と、混入率5%という数字を混同すると、選別工程の管理基準を読み違えることになる。これは選別機の性能の問題に還元できる話ではなく、熱しゃく減量という測定値をどう管理し、どう証明可能な形で残すかの問題であるため、実務では測定結果の取り扱い方まで含めて理解しておく必要がある。

内訳を分解すると見えてくるもの

建設混合廃棄物の分類を分解すると、選別の対象が何かがはっきりする。安定型産業廃棄物とそれ以外の廃棄物(木くず、紙くず等)が混在しているものを建設混合廃棄物という[2]。選別工程の役割は、この混在状態から安定型産業廃棄物を取り出し、熱しゃく減量という数値で裏づけることにある。国土交通省『建設リサイクル推進計画2020』によれば、建設混合廃棄物は再資源化・縮減率が約63%にとどまり、建設廃棄物の各品目のうちリサイクル率が90%を下回る唯一の品目とされている[5]。選別の出来不出来がそのまま建設混合廃棄物全体のリサイクル率を左右する構造であることが、この数字からうかがえる。

一方、環境省『産業廃棄物排出・処理状況調査』が示す中間処理量287,295.9千tや減量化量157,715.2千t[1]は、選別・破砕・圧縮・焼却を含む中間処理工程全体の合計値であり、選別だけを切り出した内訳は存在しないため、排出量の推計方法が平成24年度に変更されていることも踏まえると、この統計を古い年度の数値と並べて比較することもできない[1]。内訳を細かく見ようとするほど、「選別精度」という切り口では統計がカバーしていない領域に突き当たるので、実務上は分類の定義と適用範囲を先に確認し、そのうえで使える数字だけを限定して読む姿勢が欠かせない。

経年変化を描けない理由

公的統計から選別精度の経年変化を描くことはできない。環境省『産業廃棄物排出・処理状況調査』は平成24年度に排出量の推計方法を変更しており、それ以前の年度とは非連続という注記が付いている[1]。令和5年度実績の367,249.6千tという総排出量の数字も、この非連続を前提に読む必要がある[1]。しかも、選別工程の精度という指標自体がそもそも統計化されていないため、経年の伸び率を語ろうとすれば根拠のない数字を作ることになりかねない。公表された統計は限られているという前提に立ち、何が読めて何が読めないかを切り分けることが出発点であり、その整理なしに「改善傾向」や「業界平均」を持ち出しても、実務判断の材料にはなりにくい。

この数字から読める判断基準

自社の選別工程を評価するとき、全国統計との比較で語れることはほとんどない。読める範囲は狭い。だが、その狭さを正しく理解したうえで、確認すべき実務のポイントに落とし込むことはできる。

扱っている廃棄物が建設混合廃棄物に該当するかどうかで、確認すべき基準は大きく変わる。該当するなら、熱しゃく減量5%以下という数値基準が委託先・委託元双方の処理フローに直接関わってくる[2]。一方で、該当しない混合廃棄物(製造業由来の汚泥・ばいじん・鉱さいなどが混在するケースなど)であれば、この通知の基準はそのまま当てはまらない。委託契約書に処分方法をどう明記するかは、廃棄物処理法施行規則の委託契約に関する規定が関わる領域であり、許可品目と選別後の品目が一致しているかどうかの照合も合わせて必要になる。

選別工程の管理が甘いまま保管量だけが積み上がる失敗は、行政処分の公表事例でも確認できる。環境省の中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会に提出された事例資料では、破砕施設を持つ処分業の許可業者が、敷地内に廃プラスチック類や木くず等を長期にわたり大量に保管し、許可取消処分を受けた事例が紹介されている[3]。選別・破砕の処理能力を搬入量が上回ったまま是正されずに放置されると、保管基準違反という形で行政処分に至る。選別精度そのものの数値基準が乏しい分、保管量・処理能力・搬入量のバランスを自社で継続的に点検する体制が、実務上の歯止めとしてどこまで機能しているかを日常の記録で確認していく必要がある。

判断フロー

  1. 自社が扱う廃棄物が建設混合廃棄物に該当するか確認すること――該当するなら熱しゃく減量5%以下という数値基準が関わってくる

  2. 委託契約書の処分方法欄を確認すること――選別後にどの最終処分場(安定型・管理型)へ搬出するかが明記されているか確かめる

  3. 許可品目と選別後の品目が一致しているか確認すること――選別によって生じた品目が許可証の範囲内かどうかを照合する

  4. 展開検査の実施体制を確認すること――搬入時点での混入状況を記録しているかどうかを確認する

  5. マニフェスト(管理票)の処分終了報告と選別実績を突き合わせること――電子マニフェスト・JWNETの記録と現場の選別記録に食い違いがないか確認する

なお、JWNET(日本産業廃棄物処理振興センター)『令和5年度電子マニフェスト統計情報』によれば、令和5年度のマニフェスト年間登録件数は40,617,335件、うち電子マニフェストの占める割合(電子化率)は81.2%に達している[4]。選別実績との突き合わせを行う際には、記録の大半が電子化されている前提で管理体制を設計できるかどうかも、確認しておきたい実務の前提になる。

よくある誤解

誤解目視による手選別で十分に分別できていれば安定型産業廃棄物として扱ってよいと思われがちだが
実際環境省通知は、安定型産業廃棄物以外の廃棄物が混入するおそれがある限り安定型として取り扱うことはできないとしている[2]
誤解全国の中間処理量が増えていれば選別精度も上がっていると見られがちだが
実際環境省統計は中間処理工程の総量を示すもので、選別の精度そのものを示す指標ではない[1]
誤解安定型以外の廃棄物が多少(5%程度)混ざっても問題にならないと誤解されがちだが
実際通知が定めているのは熱しゃく減量5%以下という基準であって、安定型以外の廃棄物の混入率自体が5%まで許容されるわけではないと明記されている[2]

選別機の導入や更新を検討する段階にあるなら、まず自社の廃棄物が建設混合廃棄物に当たるかどうかを切り分ける必要がある。当たるなら、熱しゃく減量という測定値で選別結果を裏づけられる体制を先に整えることになる。逆に当たらないなら、許可品目・委託契約書・展開検査という実務の積み重ねで、選別の質を自社の記録として残していくしかないため、次に取るべき行動は、自社フローのどこで測定・記録・照合を実施するかを具体化することになる。