財務省「普通貿易統計 確報 品別国別表(輸出)」から単価を算出すると、同じ「廃プラスチック」というくくりでも、仕向地と品目コードが変わるだけで輸出単価はほぼ倍になり、相手国別の数量がどう動いたかを語る前に、まずこの単価差がどこから来ているかを押さえておいたほうが判断を誤らない。

廃プラ輸出価格、仕向地でここまで違う

結論からいえば、廃プラスチックの輸出単価は品目コードと仕向地の組み合わせで大きく割れる。輸出単価(貿易統計から算出・2026年1-7月:確報の累計)では、HS3915.20・マレーシア向けが54.5円/kg、HS3915.90-900・マレーシア向けが71.2円/kg、HS3915.90-110・台湾向けが102.8円/kgである[1]。同じ「マレーシア向け」でも品目コードが変われば単価は16.7円/kg動き、同じ品目系統でも仕向地が台湾になると単価は30円以上跳ね上がるため、「どの国向けか」だけで価格差を説明しようとすると論点を取り違えやすい。よく「廃プラは東南アジア向けが安い」と言われるが、その見方には品目コード別の単価差を仕向地差と取り違えているという前提が抜けている。品目コードごとの樹脂・汚れ・粉砕度の違いを無視して「国」だけで語ると、実際の建値交渉では的を外す。同様の現象は鉄スクラップでも確認でき、同じベトナム向けでもHS7204.49-190は49.6円/kg、HS7204.49-110は54.5円/kgと、末尾コードの違いだけで単価が動く(輸出単価・貿易統計から算出・2026年1-7月:確報の累計、2026年9月25日取得時点)[1]。したがって、相手国別の数量変化を読む前提としては、まず品目コード単位で見ているかを確認し、そのうえで数量や仕向地の議論に進むほうが、現場の見積りや交渉条件の整理にもつながる。

単価はどうやって出しているのか

この単価は財務省が公表した数値そのものではない。貿易統計が公表しているのは金額と数量で、円/kgの単価は金額を数量で割って算出した導出値である[1]。したがって「財務省が公表した単価」という書き方は正確ではなく、あくまで貿易統計から算出した参考値として扱う必要がある。また、注意すべき点が二つある。ひとつは、この値が国内の建値や中間処理業者の買取価格ではないことであり、貿易統計の輸出時点の単価であって、収運の現場で聞く「kgいくら」の相場とは別の数字である。もうひとつは、2026年の値が年間累計ではなく年初来の累計だという点だ[1]。1〜7月の確報を積み上げた値であり、通年の平均単価として読み替えると実態より高くも低くも出る。単価は非加法の数字なので、品目コードや仕向地をまたいで平均を取ることもできない[1]。見た目には単純な円/kgの数字でも、どの範囲の数量と金額を割り返した値なのかという前提を外すと、比較そのものの土台が崩れ、社内説明や顧客向けの価格根拠として使う際にも齟齬が生じやすくなる。

品目コードと仕向地で中身が変わる

内訳を見ると、同じ「廃プラスチック」というラベルの中に性質の異なる貨物が混在していることが分かる。

HS品目コード

仕向地

輸出単価(2026年1-7月累計)

3915.20

マレーシア

54.5円/kg

3915.90-900

マレーシア

71.2円/kg

3915.90-110

台湾

102.8円/kg

出典:財務省「普通貿易統計 確報 品別国別表(輸出)」[1]

HS3915.20は主にポリスチレン系のくず・スクラップを指す品目番号で、3915.90は「その他のプラスチックのくず・scrap」という括りになる。番号の末尾(90-900、90-110)はさらに細かい区分で、選別・洗浄・粉砕の処理度や樹脂の混合状態によって分かれる。台湾向けの単価が高いのは、同じ3915.90系統でも末尾コードが異なり、より処理度の高い貨物が計上されている可能性を示すに過ぎず、「台湾のほうが高く売れる」という国単位の一般論として読むのは早計である。中間処理の現場でいえば、ヤードでの選別・減容の工程を経て品位を上げた廃プラほど単価の高い品目コードに乗る、という構造のほうが実態に近い。一方、古紙のHS4707.10を見るとベトナム向け22.4円/kg、台湾向け22.5円/kgとほぼ同水準で、HS4707.30-900・マレーシア向けも22.1円/kgにとどまっており、仕向地差が品目によって一様ではないことも分かる(輸出単価・貿易統計から算出・2026年1-7月:確報の累計、2026年9月25日取得時点)[1]。

なお国内側の比較として、容器包装リサイクル法に基づく指定法人ルートでは、2026年7月のプラスチック(合計)引取量が54,748tとなっている[2]。同じ容リ協会ルートの内訳を見ても、2026年7月のPETボトル引取量は14,254tと、プラスチック(合計)とは別の系列として集計されており[2]、国内側でも品目ごとに量の動きを分けて見る必要があることがうかがえる。これは容リ協会ルート(容器包装リサイクル法第32条に基づく指定法人ルート)のみの数字で、市町村独自ルート(同法第33条)は含まれておらず、全国のプラスチック容器包装リサイクル量そのものではない[2]。また令和5年度以降の「プラスチック(合計)」は定義が変わっており、令和4年度以前の数値と単純に比較できない[2]。輸出ルートと国内リサイクルルートは制度も計上単位も異なるため、この数字は規模感の参考として置くに留め、輸出量との直接比較を避けることが、制度差を踏まえて数値を読み違えないための実務上の扱いになる。

相手国別の推移を語れない理由と、輸出確認手続の実務

公表された統計は限られているが、今回参照できた検証済みの系列は2026年の年初来累計一時点であり、複数年にわたる相手国別の数量推移をこの記事の中で数値として示すことはできない。前年以前の数値を記憶や概数で補うと、裏の取れない数字を記事に残すことになるため、ここでは書かない。相手国別の推移を確認したい場合は、財務省の貿易統計データベース(品別国別表)を年次で遡って当たるのが筋で、単価と数量の両方を品目コード別に見ないと、仕向地のシェアがどう動いたかは分からない。

制度面では、廃プラスチックを含む産業廃棄物の輸出について、廃棄物処理法施行規則は輸出の確認手続を定めている。施行規則第12条の12の23は産業廃棄物の輸出に係る基準を、第12条の12の24は輸出の確認を申請できる者を、第12条の12の25は輸出の確認の申請等の手続を、それぞれ定める条文として置かれている[3]。これは排出事業者責任の延長線上にある手続で、委託契約書や管理票(マニフェスト)の運用と同じく、輸出という処理方法を選んだ時点で誰が何を確認する義務を負うかが条文側で分かれている。二次資料では「有価で売れるなら廃棄物処理法の対象外」と語られがちだが、条文を当たると輸出確認の要否は有価・逆有償の区分だけで決まるわけではなく、施行規則第12条の12の27が定める「輸出の確認を要しない者」の要件に当てはまるかどうかが分岐点になる。根拠は廃棄物処理法施行規則の条文構成そのもので、該非判断を現場の慣習だけに委ねると、書類上の確認漏れという別の問題を抱え込むことになる。

これは価格の問題ではなく、該非判断と手続の問題である。輸出単価が上がった下がったという相場観の前に、取り扱っている廃プラが輸出確認の対象になるかどうかを先に詰めておく必要があり、判断を後回しにすると通関の段階で品目コードと実際の荷姿が食い違っていることに気づく形になりやすいため、契約前の確認を実務フローに組み込んでおく意味は小さくない。

判断フロー

  1. 取り扱う廃プラの品目コード(HS分類)を確認する——品目コードが変わると参照すべき単価帯も変わる

  2. 仕向地を確認する——同じ品目コードでも仕向地によって単価水準の前提が異なる

  3. 当該貨物が有価物か廃棄物かを委託契約書・取引実態に照らして確認する——判断根拠を書面に残す

  4. 廃棄物に該当する場合、施行規則第12条の12の23から第12条の12の27までの輸出確認手続の対象になるかを確認する

  5. 対象になる場合、申請窓口と必要書類を所管の行政機関の公表資料で確認する

よくある誤解

誤解廃プラの輸出単価は仕向国で決まる
実際実際は品目コード(HS分類)と処理度の差が単価を分けている要因として大きい
誤解有価で売れれば廃棄物処理法の手続はすべて不要になる
実際輸出確認の要否は施行規則の要件に照らして判断する事柄であり、有価・逆有償の区分だけでは決まらない
誤解貿易統計の単価は国内の買取相場と同じ数字だ
実際貿易統計の単価は輸出時点の金額を数量で割った値で、ヤードでの建値とは別の数字である

この数字から何を判断するか

輸出単価の仕向地差・品目コード差を見て取引の目安にするなら、まず自社が扱う廃プラの品目コードと処理度を棚卸しすることから始める。その上で、輸出を伴う取引に当たるなら、価格交渉より先に廃棄物処理法施行規則の輸出確認手続の要否を確認する。その前に、委託契約書の記載と実際の荷姿・品位が一致しているかどうかを押さえておくことで、単価の読み違いだけでなく、手続面の見落としも同時に防ぎやすくなる。