収集運搬業のみを営む事業者の場合、許可を持つだけの事業者の平均売上高は2,404万円だが、産廃処理を主業(売上高の50%以上)とする事業者に絞ると1億6,267万円まで跳ね上がる[2]。同じ「収集運搬業」という許可区分の中に、約7倍の開きがある。したがって、「産廃処理業の平均売上高」という一行の数字だけで業界全体を語ることはできない。

収集運搬のみで売上7倍の差――許可業者と主業者の数字

この数字の出どころは、環境省「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」がまとめた業種別・事業区分別の売上高表だ[2]。まず全体像を押さえておきたい。

指標

数値

出典・年次

産業廃棄物処理業界の推定市場規模

年間約5兆円

環境省「産業廃棄物処理業実態調査結果について」(平成22年度対象、2013年公表)[1]

売上シェアの集中度

全体の約4%の業者が売上の50%を占める

同上[1]

主業者の平均売上高(収集運搬のみ)

1億6,267万円

環境省「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」[2]

許可業者の平均売上高(収集運搬のみ)

2,404万円

同上[2]

産業廃棄物 中間処理量

287,295.9千t(令和5年度実績)

環境省『産業廃棄物排出・処理状況調査』(令和5年度実績)[3]

表の2行目を見てほしい。全体の約4%の業者が売上の50%を占めている[1]ため、業界の売上構造そのものが少数の大規模事業者に強く偏っており、中小の収運・中間処理業者が「平均」の数字をそのまま自社の立ち位置と見比べても、比較の前提がずれていれば実務上の判断材料としては使いにくい。

「平均売上高」はどこから来た数字か

この数字の母集団は、許可を持つ事業者全員ではない。環境省の実態調査は、都道府県知事・政令市市長から産業廃棄物処理業の許可を受けた事業者の中から無作為抽出した事業者に調査票を送り、回収した回答をもとに集計している[1]。有効調査票の発送数は13,378件、回答数は7,598件で、回収率は57.2%だった[1]。

ここで押さえておくべき区分が二つある。一つは「許可業者」――産廃処理の許可を持つ事業者全体であり、もう一つは「主業者」――産廃処理業の売上高が全体の50%以上を占める事業者で、環境省の提言資料によれば、許可業者数は全国で約11万者存在するが、実際に売上を計上しているアクティブな事業者は約6万社と全体の6割程度にとどまり、さらに主業者数は約1.2万者と全体の1割程度に過ぎない。

二次資料ではしばしば「産廃処理業者の平均年商は約1億円」のように紹介される。だが環境省の統計に当たると、この一つの数字には収集運搬・中間処理・最終処分という事業区分の違いも、許可業者・主業者という性質の違いも均されてしまっている。根拠は環境省「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」の業種別表であり、同じ主業者でも収集運搬のみの1億6,267万円から、中間処理・最終処分を兼業する事業者の6億6,977万円まで、4倍以上の開きがある[2]ため、「平均」という言葉だけで自社の規模を評価するのは早い。

中間処理・最終処分にいくほど規模が化ける

業種別の内訳を見ると、処理工程が上流(収運)から下流(中間処理・最終処分)に移るほど、売上規模の階層が一段ずつ上がっていく[2]。

業種

許可業者の平均売上高

主業者の平均売上高

収集運搬のみ

2,404万円

1億6,267万円

中間処理

2億197万円

4億1,736万円

最終処分

1億9,148万円

3億2,845万円

中間処理・最終処分

3億9,920万円

6億6,977万円

出典:環境省「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」[2]

従業員数の内訳も同じ傾向を示す。主業者の平均従業員数は、収集運搬のみが9人、中間処理が20人、最終処分が9人、中間処理・最終処分の兼業が29人となっている[2]。中間処理には破砕機・焼却炉・選別ラインといった設備投資が要るため、車両償却が主な固定費である収運専業とは資本構造そのものが違い、これは業界全体の景況感というより、工程ごとに必要な設備と許可品目の幅が変わることで生じる構造差として理解する必要がある。

多量排出事業者に該当する排出元との取引が多い中間処理業者ほど、処理単価の交渉力と設備の稼働率が売上の天井を決める。廃棄物処理法施行令第6条の3は産業廃棄物の多量排出事業者を定めており[5]、こうした排出元からの受託量をどう安定的に確保するかは、中間処理業者の売上階層を左右する論点であるだけでなく、営業戦略と設備投資判断を同時に見直す場面で確認すべき実務条件にもなっている。

令和5年度までの処理量から見える規模の裏付け

売上高の統計は平成22年度対象(2013年公表)が最も体系立っているが、処理量ベースの統計はその後も毎年度更新されている。環境省『産業廃棄物排出・処理状況調査』(令和5年度実績)によれば、令和5年度の産業廃棄物総排出量は367,249.6千t、中間処理量は287,295.9千t、最終処分量計は8,746.1千tだった[3]。ただしこの統計は平成24年度に排出量の推計方法が変更されており、それ以前の年度と単純に並べて伸び率を語ることはできない[3]。

同調査によれば、令和5年度の再生利用量計は200,788.3千t、減量化量は157,715.2千tであった[3]。中間処理量287,295.9千tという数字は、この再生利用・減量化の内訳とあわせて読むことで、中間処理業者が廃棄物をどの工程でどれだけ扱っているかを、売上高だけでは見えにくい処理実態として把握しやすくなる。

中間処理量が総排出量の約8割を占めるという構図は、中間処理業者が業界の中核を担っている実態と整合する。もっとも、年度ごとの詳細な売上高調査は更新されていないため、処理量の推移と売上規模の推移を直接結びつけることはできない。だからこそ、数字で語れない領域があることを認めたうえで、自社の決算書と業種別の表を照らし合わせ、どの工程で利益が生まれているのかを点検する作業に時間を割くほうが、次の投資判断や営業方針の見直しにはつながりやすい。

現場での判断基準

自社の売上水準を業界内で評価したいなら、まず自社が「許可業者」なのか「主業者」なのかを切り分ける必要がある。産廃処理の売上割合が低い兼業事業者を「許可業者平均」と比べれば見劣りするのは当然であり、逆に主業者同士で比べなければ、設備投資や採用計画、営業方針を決めるための経営判断材料にはなりにくい。

優良認定(優良産廃処理業者認定制度)の基準に関わる実施能力・実績の要件は、廃棄物処理法施行規則第9条の3(収集運搬業)および第10条の4の2(処分業)に定めがある[6]。認定の有無は委託契約を取る際の排出事業者側の判断材料になるため、売上規模だけを見るのでは足りず、こうした認定基準への適合状況も合わせて確認しておく必要がある。

委託基準についても誤解が起きやすい。廃棄物処理法第12条第6項は、事業者が産業廃棄物の運搬・処分を委託する際に政令で定める基準に従う義務を定めている[4]。

廃棄物処理法 第12条第6項

事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。

つまり、委託基準を満たさない委託そのものが違反になる。

委託基準は排出事業者側の義務だが、受託する側の処理業者にとっても無関係ではない。委託契約書の記載事項や許可品目の整合性を自社から示せるかどうかが取引継続の判断材料になっている以上、法令適合を説明できる体制を平時から整えておくことが、売上規模とは別軸の信用力として日々の営業や契約更新の場面で効いてくる。

判断フロー

  1. 自社の産廃処理業の売上割合を確認する――50%以上なら主業者区分の数値と比較する

  2. 許可区分(収運のみ・中間処理・最終処分・兼業)を確認する――区分ごとに売上階層が異なる表を参照する

  3. 優良認定の取得状況を確認する――施行規則第9条の3・第10条の4の2の基準との適合を点検する

  4. 委託契約書の記載事項を確認する――委託基準に沿った内容になっているかを照合する

  5. 多量排出事業者との取引比率を確認する――稼働率と処理単価への影響を把握する

よくある誤解

誤解「産廃処理業の平均売上高は約1億円」と言われる
実際実際は許可業者と主業者、業種区分で4〜7倍の差がある[2]
誤解「売上が小さい業者は業界で少数派」と思われがちだ
実際実際は許可業者の過半数が小規模で、大規模業者に売上が集中している構造だ[1]
誤解「処理量の統計と売上高の統計は同じ母集団」と誤解されやすい
実際実際は調査の対象年度・回収方法が異なり、単純に並べられない[1][3]

判断に迷ったら廃棄物処理法第12条に戻るべきである。そこに書かれているのは、委託基準に従う義務という一点であり、売上規模の大小に目を奪われるよりも、契約と許可内容の整合を自社でどう担保するかを確認することが、現場で次に取るべき行動になる。